はじめに
設備設計の仕事は、建物の「見えない部分」を支える重要な役割を果たしています。
空調設備や配管、電気配線といったインフラ部分を計画・設計することで、建物の快適性や効率性を担保します。
本記事では、設備設計の具体的な仕事内容や面白さ、きつさ、選ぶメリット・デメリットなどを詳しく解説します。
設備設計に興味をお持ちの方はぜひ参考にしてください。
設備設計の仕事内容を解説|流れと関わり方
設備設計の業務は、基本的に以下のような順序で進みます。
(多少前後するものもあります)
1. 施主打ち合わせ
- 目的: 建築物に必要な設備のニーズを確認。
- 具体例: 空調設備であれば、冷暖房の必要箇所の確認や温度調節の範囲などを決定します。
打ち合わせは施主との間で定期的に行います。
ニーズを確認してからは大枠を設計から提案していき、徐々に内容を詰めていくイメージです。
2. 基本設計
- 内容: 必要な機能を満たす設備の概要を設計。
- 具体例: 空調であれば熱源の種類(ガス、電気など)やシステム規模を設定します。
基本設計完了時は、建築図でいうと平面図としては一通り完成している状態です。
(建築詳細図や設備のスペース(PS・DS・EPS)は適所に想定で入れている状態)
設備図は、機械のスペックは一通り仮決めしている状態であることがほとんどです。
図面は、必要設備のプロットのみの場合、メインルートのみ線を引いている場合、すべての配管・ダクト・配線を記載している場合と様々です。
3. 概算
- 目的: 提案した設計にかかる費用を算出。
- 具体例: 「予算内で設置可能か」を確認する重要な段階です。
概算の段階で予算にあうかどうか確認して、オーバーしそうな場合はより安価にできるよう仕様を変更したり、建築面積を減らす、対象設備を中止するなど行っていきます。
詳細をつめたあと(実施設計図作成後)になればなるほど、変更するのに手間がかかるので、ここで金額をおさえておくことが重要となります。
4. 実施設計
- 内容: 建物の意匠設計や構造設計と調整しながら、詳細な設計図を作成。
- 具体例: 天井スペースに収まるダクトや配管の位置を決定します。
基本設計では想定であった設備スペースも、設備の仕様を決めていってから建築図に反映していきます。
実施設計では、設計図として必要な内容はすべて盛り込みます。
実施設計図の目的は主に下記2つです。
- 工事価格を決定するため
- 施工図を作成するため
よって、必要な材料が図面から抜けていたり、あからさまに空間内に設備が収まっていないことが施工中にわかると、追加の金額や対応ができてきてコスト増(会社の利益が減)に繋がります。
施工の納まり、実際に行われる工事の手順を想定しながら図面を作成するには幅広い知識と経験が必要です。
5. 官庁手続き
- 内容: 設計図を基に、必要な許認可手続きを進めます。
- 具体例: 建物用途や設備の内容によって異なりますが、下記のような手続きが必要です。
官庁手続きは、交渉力が必要だったりします。
弁護士も、法律を巡ってとらえ方や解釈など議論しますよね。
設備設計も同じで、この設備が法律、条令を準拠しているか、グレーな部分は説明の仕方で結果が変わったりします。
交渉力も設計者にとって大事な能力です。
6.見積
内容: 設計図を基に見積書を作成し、予算にあっているか再度確認します。
公共工事の場合は、設計者が予算書を作成し、予算価格が決まります。
入札業者のうち、最も安い業者が施工することとなりますが、安すぎても品質が保たれない恐れがあるので最低価格を定めることがあります。
7. 工事監理
- 目的: 設計通りに工事が進んでいるか確認し、必要に応じて設計変更に対応。
- 具体例: 工事現場での配管配置の修正など。
設備設計の流れは、設計事務所・ゼネコン・サブコンといった立場によって異なりますが、基本的にはこのようなプロセスを経て進んでいきます。
設備設計の面白さ|やりがいを感じる瞬間
設備設計には、建築物の「心臓部」を設計するという特有の面白さがあります。具体的には以下の点が挙げられます。
1. 無数の選択肢から最適なシステムを構築
- 各建物に合わせたシステムをゼロから設計する楽しさがあります。
- 例: 商業施設の空調設計で「全館空調」か「ゾーンごと空調」かを選ぶ場面。
2. 省エネルギーに貢献できる
- 設備設計によって建物全体のエネルギー効率を上げられる点がやりがいにつながります。
- 具体例: 再生可能エネルギーを活用するシステム設計。
3. 建物完成後も成果を評価できる
- 設計した建物のエネルギー効率や快適性を、数値や利用者の声で確認できる点が魅力です。
消費エネルギー量が目に見えてわかるので、仕事の効果を実感しやすいです。
設備設計のきついところ|知っておきたい課題
設備設計には特有の課題があり、それが「きつい」と感じる要因になっています。
以下に具体例を交えて解説します。
1. 設計期間が短くなることが多い
建築全体の工程が遅れると、設備設計に割ける時間が圧迫されます。
2. 意匠設計との調整が大変
建築物の外観やデザイン(意匠設計)との調整が必須ですが、建物の美観を優先されると、設備設計が難航するケースがあります。
3.法規対応のプレッシャー
設備設計は建築基準法や消防法などの法規制に厳密に準拠する必要があります。法規解釈や申請書類作成の手間が多く、官庁との交渉に時間を割くこともあります。
官庁手続きが完了しないと工事に着手できないので、プレッシャーがかかる場面となります。
このように、設備設計には時間的、体力的、そして精神的な負担がつきものですが、これらを乗り越えることで大きな達成感を得られる場面も多い仕事です。
設備設計のメリット・デメリット
メリット
- 多くの物件に関わる機会がある: 複数案件を同時進行することが多いため、経験が積みやすい。
- 転職先の選択肢が広い: 設計事務所やゼネコン以外にも、メーカーや保守管理会社で活躍可能。
- 美術センスが不要: デザインに自信がなくても、論理的な設計ができれば評価される。
- 希少な技術者として重宝される: 設備設計のプロフェッショナルは業界内で需要が高い。
デメリット
- 出張が多くなることがある: 案件の数や規模によっては頻繁に現場対応が必要。
- 社外対応が難しいことも: 設計事務所やゼネコンとの連携、サブコンの意見調整などが求められます。
メリットとデメリットは隣り合わせなところが多いですが、自分がしたい仕事の参考にしてください。
設備設計に向いている人とは?
設備設計に向いていると考えられるのは、下記のような人です。
- コミュニケーションが好き: 打ち合わせや調整が多いため、人とのやり取りが苦にならない。
- データ処理が得意: 設計時に膨大な計算や図面の確認が必要。
- 体力がある: 出張や現場対応も多く、体力面での負担がある場合があります。
- ものの仕組みを考えるのが好き: 機械や配管の設計が楽しいと感じる人にはぴったり。
設備設計者も様々な方がいます。
コミュニケーションで難所を乗り切れるタイプ、とにかくクレバーなタイプなど。
ただどの人にも共通して言えるのは、体力がある人ということでしょうか。
建設業全般に言えることですが、設備設計は受けもつ物件数から特に必要だと感じます。
まとめ|設備設計という仕事に挑戦してみませんか?
設備設計は、建築物の「見えない部分」を支えるやりがいのある仕事です。
経験を積むことで転職の選択肢が広がり、他では得られないスキルを磨くことができます。
もし興味をお持ちでしたら、ぜひ挑戦してみてください。